漫画家・山川直人のブログです。


by emikanta62

焼き鳥

何人かで居酒屋に入って焼き鳥を注文すると、
必ず誰かしらが、
箸を使って焼き鳥を串から抜く。
みんなでいろいろ食べやすいし、
それが正しい作法なのかもしれない。
わかっているんだけど、いつも思ってしまう。
ーーやっぱり焼き鳥は、串から食べたい。

店の人がテーブルに焼き鳥の皿を置くと、
すぐに誰かの手が焼き鳥をバラバラにする。
そのみごとな手際を眺めながら、
どうしても思ってしまう。
ーーやっぱり焼き鳥は、串から食べたい。

Aさんと呑んだ。
名前を書いても構わないと思うのだが、
年末はみんなギリギリの締め切りがあったり
複数の忘年会の誘いを受けたりしていて、
呑んでたことが知れると困るかもしれないので
Aさんとする。

江古田の古本屋で待ち合わせて、
それから二人で居酒屋に入った。
数日前にAさんから渡すものがあると連絡をもらって、
どうせなら軽く一杯やろうと私の方から
今日の日の提案をしたのだった。

焼き鳥の盛り合わせを注文して
皿にのったそれが運ばれてきた。
すぐに、
「串から外さずにそのまま食べよう」と提案した。
優しい好青年のAさんは、
「あ、はい、いいですよ」と言ってくれた。
それで私は、私の側にある一串を取って食べた。
皿の上でいちばん立派な肉の一串だった。

そのあとすぐ、
こんどは野菜の串焼きの盛り合わせがきた。
エリンギ、シイタケ、ネギ、トマト、シシトウだった。
アスパラガスもあったかもしれない。
それを見て困った。
ーーこれはバラバラにしていろいろ食べたい。

私はあっさり方針を転換して、
「やっぱりバラバラにしよう」と言って
野菜の串をバラバラにしはじめた。
Aさんも「そうですね」と言って、
焼き鳥の方をバラバラにしてくれた。

食べながらいろいろ話して、
ちょっと一杯のつもりがそこそこ呑んでしまった。

Aさんと別れて、
私は家まで15分ほどの距離を歩いて帰る。
酒で熱くなった頬に12月の空気が心地いい。

でも、
最初の焼き鳥一本を一人で食べてしまったことが、
悔やまれてならない。
いちばん立派な肉の一串だった。
バラバラにしてAさんにも食べさせるべきだった。
ーーAさんはどう思ってるだろう。
ーーやっぱりバラバラにするのが正解か。
そんなことを考えながら、
歩いて帰った。
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by emikanta62 | 2012-12-23 05:54 | 日々のあれこれ